いわき市で、専門スキルを生かした社会貢献の場が誕生~NPO法人ソーシャルデザイン・アソシエイツ

『公共善のために』
今新しい社会貢献のあり方が注目されている。その名は「プロボノ」…と言われてピンとくる方はどれくらいいるだろうか。これはラテン語の「Pro Bono」、英語では「For Good」、日本語ではちょっと硬いが「善のために」となる。特に公共の善のために活動することがプロボノと呼ばれる。
それはボランティアのことでは無いか?と思う方が多いだろう。答えはYes。プロボノとはボランティアの一種だ。そしてボランティア活動の中で、仕事でつちかった専門的能力を生かした活動のことを特に「プロボノ」と呼ぶ。例えば医師が途上国の難民医療に奉仕すれば、それはボランティアでありプロボノである。しかし同じく医師が町内会の自治活動にて奉仕すれば、それはボランティアではあるがプロボノでは無い。
このプロボノなどのソーシャルビジネスを福島県いわき市で展開すべく2011年に設立されたのが、NPO法人ソーシャルデザイン・アソシエイツ(SoDA)だ。2012年1月27日にSoDAの設立記念フォーラムが、いわき駅前のLatov(ラトブ)で開催された。
『do it pro bono.』
基調講演にて、日本におけるプロボノの草分けである嵯峨生馬氏(NPO法人サービスグラント代表理事)が、サービスグラントの活動を紹介された。サービスグラントの主な活動は、プロボノ活動の希望者と、プロボノに活動して欲しいNPOとの間のマッチングだ。NPOに対して「お金」を支援するのでは無く、「スキル」や「ノウハウ」を提供することによってNPOを支援する。
具体的なNPOからの支援依頼は、ウェブサイトやパンレフットの制作が多い。プロボノに参加する人達は、「週5時間」「期間約6ヶ月」「4~6名のチームで取り組む」という条件のもと、依頼された成果物を制作するプロジェクトに参加する。プロジェクトが完了すればそれでチームは解散。このようにプロボノの作業条件を限定することで、「一度ボランティアに参加したら、抜けるに抜けられなくなるのではないか」という心配は無用のものになる。
『もう一度参加してみたい89%』
嵯峨氏によると、プロボノとNPOとのマッチングは、ただつなぎ合わせるだけだと上手くいかない。プロジェクトが円滑に運営されるために、ミーティングの段取りを書いたプロジェクト進行ガイドを提供している。またプロボノ希望者の見極めも重要とのこと。「私は○○が得意です」という自己申告は必ずしも本当では無い。
そうした工夫もあって、サービスグラントのプロジェクトに参加したプロボノの方々へのアンケートでは、94%が良い印象を持っている。もう一度参加してみたいが89%。参加者は、「視野の広がりによる人間的に成長した」「社会問題・NPOに対する見方が変わった」「今の仕事に活かせる経験を得た」などと感じるようだ。
『原発事故からの避難生活者への支援~いわき市』
基調講演の後には、いわき地域絆づくり支援センターの取り組みが、センター長の照井義勝氏(NPO法人いわきNPOセンター理事長)から紹介された。
福島第一原発の事故で、半径20キロ県内の警戒区域に指定されて住民避難した8町村(広野町、楢葉町、富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、川内村)から、合計約2万人がいわき市に避難している。特に隣接する広野町からは8割近く、楢葉町からも7割近い住民の方々が避難中だ。
こうした避難状況の実態、そして避難生活者への絆づくり支援センターの支援状況が照井氏から報告された。同センターでは、きめ細かな生活支援や就労支援などが行なわれている。
『自治体初のプロボノ事業~神奈川県』
また、かながわ県民活動サポートセンターの吉田信雄氏から、NPOチェンジアップ支援モデル事業の紹介があった。
NPOの経営能力向上や経営リソース不足解消を目指すために、神奈川県では2010年に自治体初のプロボノ事業が行なわれた。その中で、プロボノに関わる人達の間で共通言語を持つことが肝心だと吉田氏は語る。共通言語を持っている人達の集まりがプラットフォームであり、プロボノプロジェクトもプラットフォーム化するかどうかが、円滑に運営できるかどうかのひとつの分かれ目のようだ。

『プロボノで被災地を支援』
フォーラムの最後に、パネルディスカッションが行なわれた。主な論点は、「被災地でのプロボノ」「いわき市でのプロボノ実施」であった。
嵯峨氏からは、被災地での復興支援プロボノの事例として、観光庁と連携したパイロットプロジェクトの事例が語られた。サービスグラントの通常のプロボノプロジェクトは期間が約6ヶ月だが、被災地支援はスピードが重要だと、1.5~2ヶ月程度に短縮して実施している(2012.1月~3月)。
いわき市でのプロボノに関して、吉田氏から「プロボノプロジェクトでは、今まで出会わなかったような人達が出会う」ので、「いわきを愛する・守りたい人達が、壁をこえて集まり交流するコミュニティをつくろう」との示唆があった。また首都圏の人の週末プロボノのように、いわき市外からのリソースを持ってくることも重要だと指摘があった。
「被災地支援では、これから雇用の問題もやってくる」と照井氏は語る。課題が大きいが故に、ソーシャルデザイン・アソシエイツのプロボノ事業にも期待は大きいが、具体的な成果をひとつひとつ積み上げていくことが大事だと確認して、フォーラムは幕を閉じた。

(まちばた記者 八木龍平)
